今回はいつもと違う感じですが・・・
「あーあ、PTAの役員になっちゃったよ。最悪……」
3月や4月の保護者会、教室の隅でそんなため息をついている人をよく見かけます。
確かに、世の中はPTA役員を「押し付け合いの罰ゲーム」のように思っています。
でも、高校で初めてPTA役員をやって1年間PTA会長を務め、その後、後援会会長を経験した私から言わせれば、あれは「将来を担う1人か2人の幹部候補に、100万円かけて外部研修を受けさせるより、よっぽど価値のあるマネジメント研修」だと考えます。
公開講座では得られない「生々しい対人折衝」
中小企業において、次世代を任せられる人材は限られています。その貴重な「1人か2人」を本気で鍛えようと思えば、外部の実践型アセスメント研修に送り出すだけで、受講料や諸経費で100万円近い投資になることは珍しくありません。
しかし、そこで学ぶのはあくまでシミュレーション。
対して、PTAの三役(会長・副会長など)や委員長が向き合うのは、逃げ場のない「現実」です。
PTAは究極のダイバーシティ組織です。仕事も育ちも教育方針もバラバラ。共通点は「子供が同じ学校」という一点のみ。そこでは、ビジネスにおける最大の武器である「役職(権限)」も「売上・利益」という共通目標も一切通用しません。
そんな武器をすべて奪われた「丸腰の状態」で、どうやって人を動かし、組織をまとめるのか。これこそがマネジメントの本質です。
「能ある母」は発言の一言でわかる。その爪をどう引き出すか?
PTAには、驚くほど能力が高いのに「目立つと面倒だから」と爪を隠しているお母さんたちが大勢います。彼女たちの正体は、一歩外に出れば職場の責任者や、現場を仕切るバリバリの実力者だったりします。
それは、会議での何気ない発言の「論理性」や、課題に対する「指摘の的確さ」で瞬時に伝わってくるものです。
しかし、彼女たちは「命令」では動きません。私は、役職を脇に置き、「一人の人間」として彼女たちに向き合いました。
「その視点、今の組織に必要なんです。お力を貸していただけませんか」と、敬意を持って誠実にお願いする。
権限も報酬もない中で、心に届く言葉を選び、納得して動いてもらう。これは、どんな高額な研修でも教えられない、最強の「巻き込み力」を養う訓練になります。
「平役員」から、最高のペアを大抜擢する
次期リーダーを選ぶ瞬間は、マネジメントのクライマックスです。
ある時、会長職を熱望する方がいました。意欲は満点。でも、周囲との調和を考えると、この人がリーダーになれば組織はバラバラになると直感しました。
一方で、約2年間ずっと平役員。でも、飲み会などでの振る舞いから「多様な意見を調整できる真の適任者はこの人だ」と確信した人物がいました。
私は、唯一ここでだけ「会長権限」を発動しました。
反対する周囲を押し切り、熱望する方を半ば強引に説得。(いまだにその方には恨まれてます)
その「目立たない実力者」を次期会長に大抜擢し、さらに補佐役として適任の平役員を副会長にセットで指名しました。
当然、周囲からは猛烈な不安の声が上がりました。
「約2年間も平役員だった二人に、いきなりトップが務まるの?」
私はこう断言しました。
「私が全面サポートします。この二人なら絶対に大丈夫です」
組織の未来のために決断を下し、自らも責任を負う。そして1年後、あんなに不安視していたメンバー、そして学校の教員の方々からも「あのコンビで本当に良かった。」と絶賛される結果を残しました。
こうしたマネジメントの真髄が学べるのは、PTAだけではありません。マンションの理事長や、町内会の役員も同様です。
もし、あなたの会社に「能力を見極めたい社員」がいれば、こうした地域のリーダー職に就くことを積極的に勧め、会社として「地域貢献有給」という形で、その活動に必要な「時間」と「理解」をバックアップしてください。
会社がその挑戦を支え、フォローがうまく回れば、社員本人の能力が飛躍的に向上するだけでなく、その家族からも「会社が理解してくれたおかげで、学校や地域に貢献できた」と深く感謝されるはずです。
100万円の研修費を投じるよりも、ずっと正確にその社員の「真のマネジメント能力」を見極めることができ、家族の幸福度まで上げることができる。これほどリターンの大きい「研修」が他にあるでしょうか。
「地域の役回りはハズレくじ」だと思っている皆さん。
次にチャンスが巡ってきたら、ぜひ「ノーリスクで受けられる最高の実戦研修」だと思って、リーダーの座に飛び込んでみてください。




